QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その2
前回、スピーカーのセンター位置の割り出しに、
「モノラル音源が楽」と書いたのですが、
考えたらアンプのステレオ/モノラル切り替えスイッチを使えばよい、
ということに気が付きました(^^;。
間抜けな話です。
大昔、ステレオの左右が逆に入っているレコードがあり、
正常な位置で聞くために、
左右のスピーカーを「やっこらせ」と持ち上げ、
移動していたことがありました。
これもスピーカーケーブルを差し替えたら済むことなのに、
何をやっていたんでしょうね(*-_-*)。
SEDAN 9のエージングが進み、
カティア・ブニアティシヴィリの”Motherland”でその変化を聞き比べました。
最初、SEDAN 9が家に来た時、
高域に癖がある音で、
高域に音が固まっているのに抜けない...
という余りよくない状態でした。
キノコの傘が開いた状態といえばよいでしょうか。
ところが1日の稼働時間3時間ほど、
3日で音がかなり変わりました。
さらに約1週間でその高域の癖が全くなくなり、
高域がきちっと抜け、
おそろしく自然な音に変化しました。
普段、音の聞き比べに使っているSTAXのイヤースピーカーと聞き比べても、
遜色のない自然な音色です。
音信号を自分のオーディオ機材からスピーカーに送って、
SEDAN 9が慣れるまで、
最初の頃はそれだけ時間がかかるということのようです。
それに聞いている感覚として、
非常に静かなスピーカーであることに驚きました。
最初のキノコの傘が開いた状態とは大違いです。
弟分のGALAN 9は既に試聴しましたが、
GALAN 9は少しやんちゃなイメージがあったのに対し、
SEDAN 9の落ち着いた鳴りっぷりは、
ASCENT20LEとは異なった音質なのに、
同じようにスピーカーを全く意識せずに音楽に没頭している自分を発見して、
いささか驚きました。
ASCENT20LEに比べると、かなりスケールアップした音です。
少し構えていたのですが...。
QUADRAL日本輸入総代理店であるネットワークジャパンの担当者に聞くと、
SEDAN 9は試聴会泣かせのスピーカーだそうで、
オーディオフェアなどでありがちな少し喧しめの外部ノイズ、
限られた時間での各機器とのエージングと試聴時間で、
その真価がなかなか発揮できないそうです。
小生はありがたいことに、
静かな環境でたっぷり時間をもらっていますので、
鳴らしこみながらその変化を含めて聞くことができています。
これほど質の高いスピーカーを聞いたのは、
久しぶりのような気がします。
今回は小生の試聴の定番、
クナッパーツブッシュによるDECCA盤「ワルキューレ」第1幕です。
これがどのように聞こえるかによって、
そのスピーカーの傾向が分かります。
セッティングの初日に聞いた時から比べ、
大違いの素晴らしい音になっています。
まず前奏曲から、
そのチャンネルセパレーションの良さに唖然としました。
チャンネルセパレーションはアンプによるところが大きいはずですが、
スピーカーでも、
ものすごく変わります。
冒頭のチェロとコントラバスのゴリゴリ感から、
オーケストラが左右に拡がり、低音が増すところでは、
凄い音を聞くことができました。
反対に高域のヴァイオリンのきれいなこと!
全くうるささがありません。
歌手が出てからも見事で、
パースペクティヴが余裕をもって聞こえるためか、
音像がもの凄くリアルです。
それにチェロの悲しげなメロディやヴァイオリンの音色が美しく響くため、
素晴らしく聞きごたえのある「ワルキューレ」第1幕になりました。
クナッパーツブッシュによる管弦楽の素晴らしさと迫力が、
十全に聞こえてきます。
SEDAN 9の弟分GALAN 9ではこの余裕感はありませんでしたので、
GALAN 9よりも大きなリボン・トゥイーターと、
エンクロージャー自体の大きさは侮れません。
フラグスタートやスヴァンホルムの歌声も見事で、
アルノルト・ファン・ミルのバスも余裕のある歌声で聞こえ、
その「ワルキューレ」第1幕の切実な物語がしみ込んでくるようです。
ジークムントの悲しい過去語りの迫力のあること!
「冬の嵐が去り」からの見事さは、
「ワルキューレ」第1幕を聞く喜びに包まれます。
悲劇の中で再会した兄妹の抜き差しならない危険な愛の姿を、
クナッパーツブッシュの管弦楽は雄弁にフォローしてゆきます。
ただの恋愛物語ではない背後に潜む背徳と危うさを、
SEDAN 9は見事に再現してくれます。
これが60年前の録音か?
と、信じられないほどです。
スピーカーを変え、
もの凄い威力の「ワルキューレ」第1幕を堪能しました。
SEDAN 9の威力は想像以上です。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)
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