TGTS01 試聴記 その4
公開日:
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最終更新日:2020/08/26
試聴記, CLASSIC, SOUND MAGIC
カートリッジを、
ortofon MC-20mk2から、
DENON DL-103Rに変えてみました。
MC20mk2よりも解像度はやや甘くなり、
音の重心も少し下がりますが、
ニュートラルで非常に聞きやすい音です。
しばらくこれで聞いてみようと思います。
もう一つ、
たびたび書いているイコライジングカーブに関して。
レコードのイコライジングカーブの規格は、
1954年にRIAAカーブに統一され、
RIAAカーブ以外のカーブはモノラルだけで、
ステレオではありえない...、
というご意見があることは承知しています。
でも、レコードの再生で、
カーブ可変式フォノイコライザーという、
一発で音が変わる機材があるわけですから、
それを使わない手はない...と小生は思っています。
それに、各ユーザーが使っている機材はそれぞれ違うわけで、
金太郎飴のように誰もが同じ機材を使っているわけではありませんから、
リスナーが「どの音に満足できるのか?」という、
個人に帰結する極めて趣味性の強い問題だと考えています。
オリジナル盤か国内再発盤か?
モノラルかステレオか?
ということは関係ありません。
さらにはアナログ録音かデジタル録音か?
ということも超越してしまいます。
デジタル録音のLPでも、
小生はイコライジングカーブを変えることで、
「あれ?」という経験を再々しています。
「正しい」「正しくない」ではなく、
各々が「これがいい」という音で聞けばよいわけです。
そのことを含んで試聴記を読んでいただければと思います。
レオポルド・ストコフスキー指揮
ロンドン交響楽団
ドビュッシー:「海」 ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲他
スコアの改編をたびたび行っていることから、
日本では評価があまり芳しくなかったストコフスキーの録音を聞きました。
ストコフスキーは映画に出たり華々しい活動もありましたので、
そのことも評価に影響しているかもしれません。
ところがその音楽家魂というか、
自己の演奏録音に対する先進的な考え方というか、
19世紀生まれの指揮者(ストコフスキーの生年は1882年!)とは、
とても思えない凄みがあります。
現代多くの指揮者やオーケストラで採用されている配置、
(舞台左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
はストコフスキーの考案で、
俗に「ストコフスキー配置」などと呼ばれます。
むしろ、19世紀生まれであったからこそ、
音楽に対する姿勢がより自由であったのかもしれません。
ストコフスキーの録音は、
SP時代からLPのステレオ録音まで、
さまざまなレーベルに渡っていますが、
代表的な録音はEMI、DECCA、RCAでしょうか。
特にDECCAのPHASE4での録音は人気が高く、
今でもCDなどで再発され続けています。
蛇足ながらPHASE4はCD4やQS4と同じような、
4チャンネルレコードと誤解されている方もいますが、
当時革新的だった4チャンネルテープデッキでマルチマイク録音され、
2チャンネルにトラックダウンした2チャンネルステレオ録音です。
今回聞いたドビュッシー:「海」を中心としたアルバムも、
DECCA PHASE4です。
ストコフスキーのPHASE4での録音は、
リムスキー=コルサコフ:「シェエラザード」が最初だったと記憶していますが、
その時はストコフスキー自身のスタジオでミックスダウンされ、
非常な名盤ではあるのですが、
ストコフスキーの気迫がこもりすぎたのか、
トゥッティで音が濁り、
再生に苦労する1枚です。
ドビュッシー:「海」を中心としたアルバムは
DECCAチームがミックスダウンしたのか、
音の濁りもなく、
非常に聞きやすい音です。
小生のLPは国内盤ですが、
それでも凄い録音であることを実感できます。
特に4mm+4mm厚ガラスターンテーブルシートの安定度は抜群で、
プレーヤー付属のゴムシートで聞いていた時とは全く違うリニアリティに、
LPのA面、B面を聞き通してしまいました。
さらにAESカーブで聞くと、
オーケストラが眼前に拡がっているようで、
こういう体験はなかなかできないですね。
かなりの低音が入っているのが分かります。
ユージン・オーマンディ指揮
フィラデルフィア管弦楽団
ラヴェル:管弦楽曲集
オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団のコンビは、
日本では少し低い位置で評価されていた傾向があります。
オーマンディは米CBSからライヴァルのRCAにレーベルを移し、
その腹いせか、
CBS/SONYはオーマンディの録音を廉価盤でいっぱい出しました(^^;。
オーマンディには古典の録音が少なく、
また、そのサウンドが非常に華麗なことから、
廉価盤指揮者とか、やわで「近代楽曲の通俗曲がお似合い」てな、
レコードファンには、
間違った認識が広まってしまったような印象があります。
自分がそうだったから...(^^;;;;。
でも、例えばベートーヴェン:交響曲第6番「田園」。
各フレーズがナイフエッジのように尖がった演奏で、
オーストリアの田舎の散策というより、
ベートーヴェンが近代から現代音楽まで切り拓いていったような感覚の、
すごい演奏になっています。
さらにオーマンディは現代音楽への造詣が深く、
さまざまな楽曲を初演しました。
ペンデレツキ:「ウトレンニャ(キリストの埋葬)」なんて、
当時バリバリの現代音楽もありました。
オーマンディの実力は、
特に後期ロマン派の音楽を聞けばよくわかります。
そして、オーマンディの音楽はやわではありません。
今回は、そのオーマンディのラヴェル:管弦楽曲集です。
「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「ダフニスとクロエ」第2組曲「なき王女のためのパヴァーヌ」など、
お馴染みの楽曲が並んでいます。
CBS/SONYからリリースされた1500円の廉価盤です。
CBS/SONYの1500円盤とか1000円盤などの廉価盤LPが、
実は優秀なLPであると小生が認識したのは、
ここ数年のことです。
だいぶ漁りました(^^;。
ただ、再生は多少難しく、
「おお!」という音になるまでいろいろ試行錯誤しました。
しかし、今回の4mm+4mm厚ガラスターンテーブルシートと、
BAKOON PRODUCTS CAP-1004で、
簡単に、ある程度解決してしまったようなところがあります。
今回はColumbiaカーブで聞いてみました。
イコライジングカーブを変えて、
レコードをより安定したターンテーブルシートに置くと、
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の凄みが伝わってきます。
特に「ラ・ヴァルス」、「ダフニスとクロエ」第2組曲は非常な名演です。
オーマンディの楽曲に対する真摯さ、
オーケストラの優秀なソノリティが伝わってきます。
「なき王女のためのパヴァーヌ」は、
ベラスケスの絵画に触発され、
「今はもういない幼いスペインの王女の自由な踊り」、
とでもいう意味で作曲され、追悼曲ではありませんが、
オーマンディの演奏はかなりハードボイルドな厳しい演奏録音で、
あまりノスタルジックでも夢想的でもありませんでした(^^;。
ちょっと残念...小生はその方が好きなんですが。
今回はオーケストラ曲ばっかりになってしまいましたが、
最後は、
フリッツ・ライナー指揮
シカゴ交響楽団
ベートーヴェン:交響曲第9番
手持ちでは交響曲第1番とカップリングされた、
国内初期盤2枚組も手元にありますが、
今回は懐かしい1枚物を...。
ちなみに、音は圧倒的に2枚組の方が余裕があってよいです。
ライナーの第9は、
小学校6年生か中学1年生の頃(ということは1964年か1965年)、
第4楽章のみが入った17cmm33回転LPを買ったのがその思い出で、
クラシックでは初めて買ったレコードでした。
今回取り上げる30cmLPとジャケットデザインは同じで、
大きさだけが違います。
数年前に中古盤屋さんでこの30cmLPを見つけ、
紫色で「9」と大きくレリーフのようにデザインされたジャケットに、
懐かしさのあまり買ってしまったのでした。
このジャケットデザインは、
今でも第9のジャケットではピカイチだと思っています。
ところが悲しいかな、
この30cm国内盤LP、かなりの詰め込みで、
「コリオラン」序曲と第9が1枚のLPに収録されているという、
考えられないような余裕のないLPではあります。
そのため、音はあまりよくありません。
中古盤屋さんから家に持って帰って初めて聞いた時、
懐かしさはありましたが、
その音のひどさにガックリ来てしまったのでした。
ところが今回、
4mm+4mm厚ガラスターンテーブルシート、
BAKOON PRODUCTS CAP-1004という強い味方がありますので、
聞き直してみました。
カーブは色々試しましたが、
やはりRCA(oldOrthophonic)で。
確かに余裕のない音ではあるのですが、
初めて聞いた時に感じた、
高域にエネルギーが集中したギスギス感は後退、
最初に収録されている、
「コリオラン」序曲は聞きやすいとは言えませんが、
第9ではその聞きにくさが非常に軽減されました。
第4楽章の合唱も、
多少、ダンゴ気味になり歌詞は明瞭には聞き取れませんが、
それでも最後の合唱まで音の暴れは少なく、
解像度もよくなり、
前に聞いた時よりもストレス少なめに最後まで聞いてしまえたのでした。
古いLPはその洗浄がものすごく大切ですが、
小生は4mm+4mm厚ガラスターンテーブルシートと、
カーブ可変式フォノイコライザーで、
非常に状態よく聞くことができています。
BAKOON PRODUCTS CAP-1004は少し価格が高いですが、
合研LABのカーブ可変式フォノイコライザーなら3万円程度、
4mm+4mm厚ガラスターンテーブルは4万弱ですので、
7万円程度で手持ちのレコードプレーヤーが奏でる音を、
かなりグレードアップすることが可能です。
なにより、LPを聞いていて小生はストレスが少なくなりました。
どういうシステムで聞いているかはTGTS01 試聴記 その1に。
商品の紹介はこちら
kna_baka@syuzo
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