QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その3
ラフマニノフは、
少し前なら小生はほとんど聞かない作曲家でした。
ピアノ協奏曲第2番も、
ごくたまにスヴャトスラフ・リヒテルのDG盤を聞く程度でした。
演奏者にとって難易度の高い楽曲だということは知っていても、
余りにメロドラマでポピュラー...というイメージがありました。
しかし、
カティア・ブニアティシヴィリのピアノ協奏曲第2番と第3番の録音を聞いてから、
俄然関心が湧き、
このところ新旧を合わせてあれこれ聞いています。
今回は新しい録音の方から、
まずアンナ・ヴィニツカヤのピアノ、
クリシストフ・ウルバンスキ指揮
NDRエルブフィルハーモニー管弦楽団盤です。
2016年の録音です。
素晴らしいラフマニノフです。
ピアノ協奏曲はともすれば、
ピアニストの曲芸的演奏に目と耳を奪われてしまうこともあるのですが、
ヴィニツカヤは非常に落ち着いたピアノで、
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番の抒情と、
楽曲に込められたラフマニノフの再生の物語を、
余すところなく聞かせてくれます。
ウルバンスキとエルブフィルハーモニーのサポートも見事で、
時にピアノ付き交響曲第2.5番のように聞こえてしまう楽曲を、
競争曲ではなく、しっかり協奏曲として聞かせてくれます。
SEDAN 9ではピアノ音が極めて自然で曖昧さがなく、
ピアニシモからフォルテシモまで、
明晰にその音を聞く音ができます。
ピアノと管弦楽のバランスが非常によい録音で、
ピアノが管弦楽に埋もれてしまうこともなく、
ヴィニツカヤの細やかなタッチまで、
非常にうまく再現してくれます。
もう1枚、
ヴァネッサ・ベネッリ・モーゼルのピアノ、
キリル・カラビッツ指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団盤を聞きました。
2015年の録音です。
これはどちらかというとジャケ買いなのですが(^^;、
楽曲が始まってすぐ、
ゾクゾクするような感覚に襲われました。
これもまた素晴らしい演奏録音です。
ヴィニツカヤよりもさらにゆったりとした抒情味が豊かで、
歌心がもの凄い演奏だなと思ったら、
モーゼルはイタリア出身で、
子供の頃はイタリアでピアノを学んだ人なのですね。
その美形にだまされるところでしたが、
このラフマニノフの歌は凄味さえ感じさせるほどです。
ピアノと管弦楽のバランスも良好、
SEDAN 9で、
その豊かな音楽にズブズブとはまりながら聞いてしまっています。
まだ小生のラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番の聴取経験は浅い方ですが、
それでもこの歌に溢れた演奏録音は、
楽曲の一面の真理をついているようで、
聞いていて大きな感動を得られました。
ロンドン・フィルもしっとりとした抒情を聞かせてくれます。
第1楽章、第2楽章も素晴らしいですが、
第3楽章でその抒情と歌にノックアウト寸前です。
同じCDに収録されている
「コレッリの主題による変奏曲」の凄味のある演奏を聞いても、
そのことを感じます。
おお!この「コレッリの主題による変奏曲」の録音は、
かなり凄くてオーディオの試聴に使えますね(^^)。
SEDAN 9では、その演奏と音の凄さに恐怖感すら感じるほどです。
このところのラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番は、
録音ラッシュともいえるほどで、
最近、この曲を本格的に聞き始めた小生は、
どれを買ったらいいか迷ってしまい、
結局あれこれを買う羽目に陥って財布が悲鳴を上げています。
また、良否は別にして、
「それにしても美人ピアニストが増えたな」と思います。
もう一つ感じることは、
ブニアティシヴィリをはじめ、
ヴィニツカヤやモーゼルなど、
(クレア・ファンチという異色のピアニストもいますが)、
最近、小生の目に入ってきたピアニストは、
現代音楽をその演奏活動の核に置いていて、
その核をしっかり保ちながら、
ポピュラーなピアノ曲に向かっているということです。
モーゼルなんてその核がシュトックハウゼンですからね、
凄いです。
もう一つ、ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番の録音、
これも最近リリースされた反田恭平盤は、
ピアノと管弦楽のバランスがイマイチで、
指揮のバッティストーニのやりすぎか...
と、ASCENT20LEで聞いた時には感じていたのですが、
SEDAN 9で聞くとイメージ一新、
反田恭平のピアノ、バッティストーニ指揮による管弦楽とも、
少し重い方向ながらかなりバランスの良い音で、
納得しながら聞くことができました。
これもまた、大変良い演奏ですね。
スピーカーが変わると、
いろいろ聴感上のイメージが変わります。
その良い意味で、
SEDAN 9は今まで聞いてきた音盤の再聴を迫ってきます。
なお、販売はブラックになります。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)
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