QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その11
今回、またまたアンプを変えました。
今度は日本の小さなメーカーMUSICAの
RAICHO 3 intです。
インテグレーテッドアンプで、
通常のアンプの4分の1くらいの大きさの小型アンプです。
最初、聞いた時は大きく落胆しました。
貧弱な音で、
まるで塗装をしていないプラモデルのような音なのです。
味も色気もなく、
軽い音で「うわー!買って失敗か!」と思いました。
ところがオーディオの面白さ、
RAICHO 3 intの電源を入れっぱなしにして、
ほぼ一日中、何らかのCDをかけていると、
ものの見事に音が変わり始めました。
ダイナミックレンジもこのクラスにしては非常によく、
Fレンジもかなり広いです。
さらに、解像度も非常によく、
最初に我が家に来た時とは雲泥の差になっています。
おそらく、エージングはまだ進むと思われますので、
また、一皮ずつむけていい方向になること期待大です。
さらにパラメトリックイコライザーのように、
トーンコントロールが3つ付いていて、
そのトーンコントロールで、
ある程度自分好みの音にすることができます。
ただ、元々、低音をボカスカと鳴らすようには作られていませんので、
その変化はほどほどです。
「ボーカルポジション」とされている中域のコントロールで、
最も音が変わります。
CDのマスタリングが変わると、
その演奏へのイメージが変わってしまう...
これは、よくあることです。
今回は、
以前、CDを持っていて、
そのCDの音に影響されたのか、
演奏も平々凡々に感じられて処分してしまい、
新たに買い直したCDに感銘を受けてしまった、
カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の、
マーラー/交響曲第9番です。
2枚組で第1番がフィルアップされています。
以前持っていたCDは、
第1番と第9番は別々に発売されていたと記憶していますが、
今回再購入したCDは2枚組に、
第9番、第1番の順番で入っています。
第9番は1964年、第1番は1966年のセッション録音で、
まだ、マーラー・ブームと言われる少し前の録音でしょうか。
第9番を聞き直し、
自分は以前、何を聞いていたのだろう?
と、思ってしまいました。
驚いたのは、1964年という年代にもかかわらず、
その録音が大変すばらしいことです。
SEDAN 9とエージングの進んだMUSICA RAICHO 3 intで聞いて、
その解像度の高さ、
Fレンジの広さ、
さらには、もの凄いダイナミックレンジの振幅に、
第1楽章から聞き惚れてしまいました。
セッション録音ながら、
凄い緊張感をはらんだ演奏録音です。
威嚇的なグランカッサやティンパニーが、
平穏なだけではない第1楽章の性格を見事に表現してゆきます。
第2楽章は少し早めのテンポで、
田舎の楽団のユーモラスな演奏には聞こえませんが、
この第2楽章は大迫力で凄いです。
さらに第3楽章の迫力も並ではありません。
第3楽章の第4楽章への前哨となる部分の弦楽器の美しいこと!
第4楽章はゆったりしたテンポで演奏されることが増えましたが、
初演指揮者ブルーノ・ワルターの演奏録音を聞くと、
けっこう速めで晩年のCBS盤でも21分3秒です。
アンチェルも結構テンポが速く23分25秒です。
レヴァインやベルティーニの、
もの凄く遅い30分前後というのが嘘のようです。
おそらく、ワルターのテンポが、
マーラーの意図として、
本来なら最もふさわしいのかもしれません。
第5番第4楽章アダージェットも、
ムードたっぷりの遅い演奏録音が多いですが、
ワルターやメンゲルベルクなどは速めのテンポで歌い上げてゆきます。
といいつつ、
小生も遅い第9番第4楽章や、
第5番アダージェットも好きですから、
どれが正しいということはあり得ないとは思います。
テンポは幾分早くても、
アンチェルは深々と第4楽章の永訣の歌を奏でてゆきます。
大体、どの指揮者の第9番第4楽章聞いても、
小生は感動してしまうのですが、
アンチェル盤も素晴らしい演奏を聞かせてくれます。
病的というより、
健康な精神が永訣を歌っているようで、
アンチェル盤にも納得しながら聞くことができました。
アンチェルはユダヤ系チェコ人であったため、
第二次世界大戦中、
自身はテレージェンシュタットの収容所に放り込まれ、
家族は全員アウシュヴィッツ強制収容所に送られ、
ナチに殺されました。
第二次世界大戦の終結とともにアンチェルは解放されましたが、
その地獄から立ち直っていったアンチェルの精神力の強さに、
畏敬の念を持つとともに、
自分の生きざまも問われているように感じます。
アンチェルの創り出す音楽から、
決して地獄を見た人間の眼差しだけではないものを感じるからです。
その後、アンチェルは楽旅中、
1968年のチェコ事件のために当時の西側に亡命、
小澤征爾の後、
カナダのトロント交響楽団の首席指揮者に就任していたのですが、
1973年に亡くなりました。
第9番にフィルアップされている第1番も、
非常な名演の名録音です。
もう1種、
同じマーラー/交響曲第9番で、
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の、
1983年のライヴ録音を聞きました。
第1楽章のティンパニーの聞かせどころは、
ポンポコティンパニーでたぬきの腹叩きのようですが、
全体的には漸進的で、
骨太のマーラーです。
第2楽章、第3楽章も素晴らしいですが、
この演奏録音で一番感心したのは、
第4楽章の表現でした。
第4楽章は大体において諦観とか、
瞑想的とか、
生との訣別という表現が多いのですが、
朝比奈隆はむしろ、
「生への意思」として第4楽章を表現してゆきます。
朝比奈隆というと、
どうしてもブルックナー、ベートーヴェン、ブラームス...
が強い印象になってしまい、
マーラーまであまり頭が回っていませんでした。
ところが、古い1968年の第4番のモノラル盤をたまたま聞き、
当時、まだ日本に定着していたとは言いにくいマーラーを、
非常に立派な表現で演奏していて驚いたことが、
朝比奈隆のマーラーを見直したきっかけでした。
そこで、買い置きして処分を免れていた、
朝比奈隆のマーラーをあれこれ引っ張り出して聞いてみました。
朝比奈隆=マーラーでは「大地の歌」という印象があり、
2種の録音とも聞いているのですが、
あまりいい印象がなく、
他の交響曲の、
棚の置物化していたCDを聞いて、
こりゃ、素晴らしいマーラーだな...と、
印象が良い方向にガラッと変わってしまいました。
朝比奈隆は、
第二次大戦中は上海や旧満州(中国東北部)で
昭和18年から断続的に指揮を執っていましたので、
中国の唐詩を元にした「大地の歌」に特別な感慨を持ち、
「アジア人の自分が振らなければ」と思っていたそうですが、
「大地の歌」に描かれる世界と、
朝比奈隆の音楽では少し齟齬が感じられていました。
この、第9番の演奏録音を聞き、
朝比奈隆がマーラーの音楽から引き出した、
かなり力強い「生への意思」を感じ、
なるほどそうだったのか、と頓悟したところがあります。
RAICHO 3 intとSEDAN 9では、
大きな部屋で大音量...には向かないかもしれませんが、
ニアフィールドで、
朝比奈隆の名演をしっかりと堪能することができました。
なお、販売はブラックになります。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)
なお、SEDAN 9(ブラック)は入荷しております。
全国のQUADRALを扱っていただいている、
オーディオ専門店でご注文可能です。
ぜひ専門店でご注文ください。
ただ、近くにオーディオ専門店がない、
あるいはネットショップなどでアカウントがない、
という方は、以下からご注文可能です。
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