QUADRAL GALAN 9 試聴記 その6
今回でクナッパーツブッシュの音源試聴はラストです(^^;。
ハンス・クナッパーツブッシュは、
その晩年、ステレオ録音に間に合いました。
DECCA(日本ではLONDON)にいくつか、
WESTMINSTERにブルックナーとワーグナーのステレオ録音があり、
さらにPHILIPSの1962年「パルジファル」バイロイトライヴ(現在はDECCA)があります。
どれも永遠の名盤化しつつあります。
今回はDECCAの、
1957年セッション録音、
「ウィーンの休日」と題された、
ウィンナワルツを中心としたアルバムです。
もちろん、ステレオです。
「ウィーンの休日」は、
最近、タワーレコードがVINTAGEシリーズの中で復刻したり、
シングルレイヤーのSACDが発売されていますので、
比較的入手しやすい録音であると思います。
今回は、昔懐かしいキングレコードによるCD復刻です。
DECCAの日本発売は、
LONDONレーベルとして、
以前の発売元はキングレコードでしたが、
輸入盤、国内盤ともUNIVERSALに変わり、
音の傾向が変わりました。
日本のキングレコードがDECCAから供給を受けていたソースは、
金属原盤かテープでした。
金属原盤からのCD復刻は、
その保存状態もあったのか、
CDではかなりつらい音になってしまったものもありますが、
テープからの復刻は、
少し箱庭的ではあるものの、
昔国内盤LPで聞いた懐かしい音そのものが蘇っています。
キングレコードの「ウィーンの休日」はテープからの復刻のようで、
非常に成功しています。
UNIVERSALもテープからの復刻ですが、
その音がグローバル化してしまったのに対し、
キングレコードの復刻盤は、
日本だけかもしれませんが、
当時のローカルともいえる音色が楽しめます。
ただし、UNIVEASAL盤の方が音は華やかです。
クナッパーツブッシュのDECCA録音は、
当時のウィーン・フィルから、
ヨーロッパのローカル・オーケストラそのものの響きを引き出し、
少しデッドな録音ながら、
非常に味わい深い音、音楽を聞かせてくれます。
特に木管楽器にそのことは顕著です。
同年代の他の指揮者によるウィーン・フィルの録音を聞いても、
クナッパーツブッシュがウィーン・フィルから引き出した音はしませんので、
これはクナッパーツブッシュが狙った音だといえます。
クナッパーツブッシュは、
ワーグナーやブルックナーがそのレパートリーの中心であったため、
大作向けの指揮者だと思われがちですが、
ウィンナワルツや小品にも極めて優れた成果を残しています。
コムツァーク/「バーデン娘」はもちろん、
他の指揮者による録音の多い
ヨハン・シュトラウス2世「加速度ワルツ」や、
ワルツ「ウィーンの森の物語」など、
おそらく、
クナッパーツブッシュの演奏録音が第一ではないかと思います。
キングレコードの古いCDから、
匂い立つようなウィーンのローカルな味わいが立ち上がってきます。
GALAN 9をニアフィールドで少しボリュームを上げて聞くと、
フランスでもドイツでもない、
強烈なウィーンというヨーロッパのローカル情緒と、
強奏での演奏の充実した音の迫力に唸ってしまいました。
最初に収録されている
「ラデツキー行進曲」の冒頭の小太鼓は少し頼りないですが、
音楽が進むと気にならなくなり、
ポルカやウィンナ・ワルツでは、
その情緒、演奏とも見事なものです。
ウィーン・フィルが演奏し慣れている曲目群であったため、
おそらく、ほとんどリハーサルなしで収録されたものと思われます。
GALAN 9の兄貴分である、
同じAURUMシリーズのRODAN 9で同曲を聞くと、
さすがにトールボーイタイプのスピーカーですので、
その再現力は凄いものがありました。
一般的なリスニング環境では、
GALAN 9も、それに負けないくらいの満足感が得られます。
細かなニュアンスまで再現しますので、
より微細な聞き方も可能です。
「加速度ワルツ」の蒸気が沸騰してゆく様子、
「ウィーンの森の物語」の、
最初のうらぶれた情景から、
ウィーンの見事な絢爛さまでの落差を、
GALAN 9は見事に聴かせてくれたのでした。
【GALAN 9のスペック】
形式:2ウェイ バスレフ
出力:80/140 W
周波数特性:36…65.000 Hz
クロスオーバー周波数:2900 Hz
能率:85 dB
インピーダンス:4Ω
トゥイーター:quadral quSENSE アルミニウム リボン
ウーファー:155mm quadral ALTIMA
寸法(w x h x d):33 x 21 x 29 cm
重量:10 kg/1台
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