AURUM RODAN9試聴記6
今回のRODAN9の試聴は、アナログ盤でレポートしようと思います。
アナログディスクも録音年代を問わず高音質なものが数多くありますが、せっかくなので究極の製造過程ともいえるダイレクトカッティング盤を取り上げました。
まず、その製造過程をおさらいします。
大方のダイレクトカッティングの過程は、演奏者⇒マイク⇒ミキシングコンソール⇒カッティングアンプ⇒カッティングヘッド⇒ラッカー盤という流れになり、テープ等の記録媒体を使わずに製造されるところに大きなポイントがあります。
実際の録音現場は、演奏者、エンジニアとも失敗の許されない環境の中、かなりの緊張を強いられるとの事。私もかなりの数のダイレクトカッティング盤を収集していますが、中には、レンジが狭く鮮度を感じないもの、演奏が面白くないものもあり、必ずしも高録音だと限らないとの印象を持っています。音質に関しては、過小な録音レベル、過度のリミッターやカッティングマシーンまで長く引き伸ばされたケーブルの影響もあると思われます。そこで今回は、演奏・録音とも満足できるJAZZ系の3枚をチョイスしました。
①「THE THREE」 (EAST WIND 国内盤)
ジョー・サンプル(p)、レイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)のピアノトリオ
1976年発売。1975年ロサンジェルス、ワーナー・ブラザース・スタジオにて録音
言わずと知れたダイレクトディスクの名盤です。
EAST WINDレーベルは、これ以降、アートブレイキーやバド・シャンク等を起用したダイレクトカッティング盤をリリースしています。
このアルバムは、JAZZ及びフュージョン界のレジェンドが終結した夢のようなセッションで、演奏録音とも名盤に相応しいと思います。
演奏は総じて、ソウルフルなジョー・サンプル、豪快なレイ・ブラウン、小粋なシェリー・マンがソロでは個性を、時に3人が拮抗しながらプレーする様子が刻まれています。
A面3曲目SATIN DOLLでは、ジョー・サンプルのピアノのアタックが腰砕けにならずに出ています。ドラムのスネアの抜けも良く、ベースは良く弾んでいます。
RODAN9では、厚みが有り鮮度の高い録音を余さず聴かせてくれました。
②エド・グラハム「HOT STIX」(M&K REALTIME RECORDS 米盤 西ドイツプレス)
1978年ビバリーヒルズ、M&Kスタジオにて録音
エド・グラハム(ds)、アール・ハインズ(p)、ウェズレイ・ブラウン(b)
M&K REALTIME RECORDSは、ダイレクトカッティング盤を数枚リリースしていますが、どれも高音質と評判で、中には中古市場で高値のついているアルバムもあるほどです。
私も、手元に数枚ありますが、音質的にはデジタル録音のタイトルよりも、ダイレクトカッティングのタイトルの方に分があるように思います。
このアルバムは、45回転ダイレクトカッティング盤となっています。
RODAN9では、エド・グラハムの強靭かつ鮮烈なドラムが聴けました。
おそらくマイクは、ワンポイントに近いセッティングではないかと思われます。まずドラムセットの位置が良く判り、奥行も感じることができます。
誇張感のないバスドラムはもとより等身大のフロアタムやスネアの皮の大きさが良く判ります。RODAN9よりウーファーの口径の大きなスピーカーであれば、このあたりの印象は違って聴こえるのではないかと推測されますが、私はこの音の出かたに少しも違和感がなく好ましく感じられました。
③リー・リトナー「ON THE LINE」(JVC 国内盤)
1983年ロサンジェルス、キャピタル・スタジオにて録音
リー・リトナー(g)、デイヴ・グルーシン(key)、ハーヴィ・メイソン(ds)、ネーザン・イースト(b)、アーニー・ワッツ(sax)他
リトナーは、ほぼ同じメンバーでJVCからこのアルバムを含め4枚のダイレクトカッティング盤をリリースしています。このアルバムはその4枚目となります。
レコーディング・チャートがこれです。大方のダイレクトカッティング盤のライナーノーツには、このようなチャートをライナーノーツに添付する例が良く見られます。
演奏は、手慣れたミュージシャンの4回目のダイレクトカッティング録音となり、非常に一体感と良い意味での緊張感のある録音で、スタジオライブのような息の合ったプレイが聴けます。
大変に鮮度が高く、聴感ダイナミックレンジも前出の3枚とは比較になりません。
このアルバムではリトナーは、ギターをギブソンのES-335からアイバニーズLR-10に持ち替えています。そのエフェクタのかかったLR-10のスタジオの空気感を伴ったエコーがRODAN9ではきれいに出ています。グルーシンのキーボードはエッジのきいたクリアな音色で、パーカッションの高音域がリボン型トゥイーターでは倍音がきれいに出ています。
また、電子ドラムのパルシィヴな音にもRODAN9のウーファーは良く反応していて、硬さを伴わないのに緩さや鈍さはみじんも感じ無かったのには驚きでした。
以上のようにJAZZ系で生楽器、電子楽器のソースを試聴しましたが、次回は引き続きアナログのダイレクトカッティング盤でClassic系の試聴レポートをお伝えしようと思います。
TUNTUN
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