QUADRAL AURUM SEDAN 9 試聴記その16
ワーグナーの楽劇からの音楽は、
陶酔するような耽美的な部分があり、
ドイツの伝統的な器楽派からは嫌われる反面、
多くの信奉者を生み出しました。
さらにドイツだけではなく、
フランスはワーグナーの毒が回ったというか、
多くの作曲家がワーグナーの影響から抜け出るのに四苦八苦しました。
映画産業が盛んになると、
ワーグナーの楽曲からインスピレーションやヒントを得た映画音楽が、
盛んに銀幕を盛り上げました。
ワーグナー管弦楽曲集というと、
さまざまなオペラや楽劇の序曲や前奏曲、
各場面の音楽を演奏会用に編曲された録音が多いです。
ワーグナーの楽劇は、
その全体を聞いて、
初めて理解できるということが少なくありませんが、
なんせ、楽劇は長いので管弦楽曲集は重宝します。
家のCDの棚には、
もちろんクナッパーツブッシュをはじめ、
古今の様々なワーグナー管弦楽曲集がありますが、
その中でもロヴロ・フォン・マタチッチが、
1975年にNHK交響楽団と残した、
12月4日のライヴ録音に大きな感銘を受けました。
マタチッチはバイロイト祝祭音楽祭にも登場、
1959年に「ローエングリン」を指揮しました。
マタチッチがどの程度、
歌劇場でワーグナーのオペラや楽劇を指揮したのか分かりませんが、
非常に優れたワーグナー指揮者の一人だったといっても、
過言ではないと思います。
この、NHK交響楽団とのライヴ録音からも、
その片鱗を聞くことができます。
録音年代の割に、
CDに収録された音が非常によく、
ホールにいるような臨場感があります。
SEDAN 9は解像度が高いため、
さらに楽器の分離が見事で、
音がだんごになって聞こえるということはありません。
「パルジファル」第一幕への前奏曲は非常にゆっくりとしたテンポで、
クナッパーツブッシュの若いころの演奏録音よりも遅いくらいですが
(1964年の録音を除いて、
クナッパーツブッシュは若いころの方がテンポがゆっくりしています)、
楽劇の前奏曲の意味するところを、
渋さをもって余すとことなく聞かせてくれます。
当時のNHK交響楽団から、
これだけの豊穣な響きと同時に、
真摯な「パルジファル」を聞けるのは、
大きな喜びでもあります。
続いて「パルジファル」から、
「聖金曜日の音楽」が収録されていて、
「パルジファル」が好きな人なら、
その音楽に触れるだけで心が震えること請け合いです。
マタチッチは小細工をせず、
ごく自然にゆったりと「聖金曜日の音楽」を演奏させてゆきますので、
その感動はひとしおです。
マタチッチは1959年、自身がバイロイトに出演した時、
クナッパーツブッシュが「パルジファル」を指揮をしたとき、
その指揮台のすぐそばで、
クナッパーツブッシュの指揮姿をつぶさに見ていたそうですので、
大きな啓示を受けていたのかもしれません。
マタチッチはクナッパーツブッシュに、
「私は先生を尊敬します」
と言ったところ、
「もう一度俺のことを先生と言ってみろ、てめぇの尻を蹴っ飛ばすぞ」
と言われたそうですが。
通常、管弦楽曲としての「聖金曜日の音楽」の演奏では、
歌手が出てこない不満がどうしても出てしまうのですが、
マタチッチの演奏では、
そういう不満が出てこないことが不思議です。
非常に美しい演奏録音です。
「パルジファル」からの2曲で既に大満足ですが、
CDにはさらに、
「ジークフリート」から「森のささやき」、
「神々の黄昏」から、
マタチッチ編曲による、
「序奏~ジークフリートのラインへの旅」、
「葬送行進曲~終曲」が収録されています。
この後半の3曲も素晴らしい演奏録音です。
「神々の黄昏」からの2曲は、
ダイジェスト版とはいえ、
非常にうまく編曲してあり、
交響詩「神々の黄昏」第1部、第2部というような雰囲気です。
オーケストラにたまにミスがあったりよろける部分はありますが、
楽曲が楽曲なだけに、
あまり気にせず、この名演を楽しむことができます。
マタチッチのワーグナーの楽曲に対する愛情が伝わってきます。
「序奏~ジークフリートのラインへの旅」の解放感は素晴らしいですし
(最後は少しぎょっとしますが^^;)、
「葬送行進曲~終曲」も楽劇を彷彿とさせ
(ドキッとするノイズが混入しますが^^;;;;)、
行進曲の途中から大迫力で、
終曲(ブリュンヒルデの自己犠牲)では渦を巻くように、
楽劇の終焉に向けて凄味のある演奏が繰り広げられてゆきます。
その音の洪水はさすがに凄く、
コンサート会場にいた人は、
陶酔と忘我の境地だったのではないか...と想像できます。
羨ましい...。
抜粋でも、
こういう演奏や演奏録音に接すると、
確実にワーグナーの「毒」にやられますね(^^)。
SEDAN 9の再現力も見事でした。
なお、販売はブラックになります。
SEDAN 9
型式:2ウェイ バスレフ型 ブックシェルフスピーカー
定格出力:120W
ミュージックパワー:180W
再生周波数帯域:33Hz~65,000 Hz
クロスオーバー周波数:2800 Hz
能率 (dB/1W/1m):85 dB
インピーダンス:8 Ω
ツイーター:quadral quSENSE® リボン型
ウーハー:180 mm φ quadral ALTIMA®
レベルコントロール:トゥイーター±2dB
外形寸法 (高さx幅x奥行):39 x 23 x 35 cm
重量:14.5 kg(1本)
価格:570,000円(税別・ペア)
なお、SEDAN 9(ブラック)は入荷しております。
全国のQUADRALを扱っていただいている、
オーディオ専門店でご注文可能です。
ぜひ専門店でご注文ください。
ただ、近くにオーディオ専門店がない、
あるいはネットショップなどでアカウントがない、
という方は、以下からご注文可能です。
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